【税法条文を読むための】法令・判例の基礎知識について解説①

税務・会計

皆さんこんにちは、鹿児島の税理士の引地です。

今回は、税法条文を読むための法令・判例の基礎知識について解説していきたいと思います。

今回参考にさせていただいた文献が「税法論文ってどう書くの? 著:脇田弥輝」という本です。

根拠条文を探すために、いろいろ調べたりするのですが、そもそもの読み方を税理士試験では学ばないので、そういった意味で、読み方を学べる本を探していたのですが、ドンピシャでした!

すごく分かりやすくて実用的でしたので、内容をかいつまんでシェアしていきたいと思います。

法令の種類

法律と法令

「法律」と「法令」。似たような言葉ですが違いがあるのでしょうか?

・・・簡単にいうと、法令は法律より広い範囲のもので、法律は法令に含まれます。
「法律」は国会で制定されるものです。日本では、選挙によって選ばれた国会議員が話し合い、法案を審議し、衆参両院で可決されて法律が成立します。「法令」は法律よりも広い概念で、国や行政機関で定められた決まりのことです。国会による「法律」と行政機関による「命令」を合わせて「法令」といいます。さらに憲法や条約、地方自治体の決まりなどを含むこともあります。

法令の中に、法律も含む、ということです。

また、法令には優劣があり、下位の法令が上位の法令に反する場合には効力は生じません。

原則として、その事件が起こった時点での法令が適用されるため、改正後の法令を参照しないように注意が必要です。(法の不遡及、といって、原則として新しい法令を過去の事案にさかのぼって適用することはありません)

法令の種類

  • 日本国憲法 ⇒日本の最高法規
  • 条約 ⇒ 国家間の合意規範
  • 法律 ⇒ 国会の議決によって制定される規範
  • 政令 ⇒ 憲法、法律の規定を実施するため、内閣が制定する命令
  • 府令、省令 ⇒ 内閣総理大臣・各省大臣が制定する命令
  • 条例 ⇒ 地方公共団体の議会によって制定される決まり

法令は、法的拘束力を持ちます。つまり守らないといけないということです。

法令の中に通達は入っていません。つまり、従わないといけない、わけではないのです。

通達 ⇒ 行政機関が、管轄の下位機関およびその職員に対して職務に関して命令するために発する。

・・・通達は、機関内部でのみ効力をもつとされていて、法的拘束力はありません。たとえば、国税庁が税務署の職員に対して「〇〇税法のここは、このように取り扱いなさい」と命令するようなものです。内部で通用する決まり事であり、国民が守らなければならないものではありません。いわば、学校の校則はその学校内での決まり事で、学外の人達が従わなくてはいけないものではないのと同じです。
 ただし、通達は、実際には管轄する業界等を規制していて、税務調査でも通達が判断の基準とされることがあります。通達を根拠に課税されて、しばしば課税庁と納税者との争いが起こります。

本則と附則

条文は、本則と附則で構成されています

・・・法令本体の規定を「本則」といい、本則の後ろに置かれるものを「附則」といいます。
 附則には、その法令の施行期日(法令が効力を発動する日)や、経過措置(施行期日をまたいで行われる取引に対する扱いなど)などが記載されています。したがって、「附則」というとおまけのようなイメージがありますが、けっこう重要なのです。

法令の効力

法の効力の優先度

前述したように、法令には優劣があります。優先度は下記の通りになります。

憲法 > 法律 > 政令 > 府・省令

消費税法でいえば、

消費税法 > 消費税法施行令 > 消費税法施行規則 > 消費税法基本通達(通達は法令ではありませんが…)

となります。

なお、法令が効力を持つのは、成立した瞬間に効力を持つのではなく、施行期日から効力が生じます。

法令の成立

公布(成立した法令を公表し、国民が知ることができる状態にすること。通常、『官報』に掲載されることによってされる)

施行(法令の効力が発動される)

上記の流れで、法令が適用されることとなります。

税制改正の流れ

法令の話をしていますので、税制改正の流れについても押さえておきましょう。

税制改正は、税法に関する制度の見直しをすることです。

・・・税制改正は「法律の根拠がなければ税金を賦課・徴収されない」という租税法律主義のもと、以下の手順で立法の手続きが進められます。

8月頃:各省庁から税制改正要望が提出

 各省庁から、来年度の税制改正の要望案が集められ、財務省(国税)と総務省(地方税)に提出します。毎年150~200個前後の項目の要望が提出されていて、財務省のホームページより確認することができます。あくまで要望なので実現しないものも多いです。

12月中旬:与党が税制改正大綱を発表

 税制改正大綱(原案)は税制調査会が中心になって作成されます。法案の原案となる重要なもので、網羅的にまとめられます。
 ・・・12月下旬~翌年1月頃に、この税制改正大綱(原案)を要約した「税制改正大綱」が政府案として提出され、閣議決定を受けます。

2月頃:税制改正法案を国会に提出

 税制改正大綱はあくまで骨子であり、そのまま法律になるわけではありません。この大綱を踏まえて、政府が税制改正法案を作成して通常国会に提出されます。

3月頃:税制改正法案の可決、4月に改正税法が施行

 国会に提出された税制改正法案は、衆議院・参議院で審議・採択されて、3月下旬までに可決・成立され、それから公布となります。

実務においては、税制改正大綱に注目することになります。税制改正大綱が法案の原案になるからです。先送りや見送りもありますので、あくまで参考程度ではありますが。

実際の内容は、改正法が可決・成立される3月頃に確認することになります。

条文の読み方

前述したように、条文は「本則」と「附則」に分かれます。

・・・本則は「条」を基本として構成されています。ただ、条文数の多い法令の場合、本則の内容を整理するため「編」「章」「節」「款」「目」などに分けられます。

・・・それぞれ条文には「見出し」が付いています。さらに、「第〇条第△項第□号」のように、「条」⇒「項」⇒「号」と細かく分けています。第1項には番号を付さずに、第2項以降「2、3・・・」と番号を付していますが、文章で条文の特定をするときは、「第〇条第1項」のように表現します。

条文を読むコツとしては、

①かっこ書きを飛ばして読んでみる
 ⇒かっこの始まりと終わりの対応関係が分かるように、マーカーで色分けしておくと読みやすくなります。

②主語と述語だけ抜き出して読んでみる
 ⇒たとえば、(法人税法第34条第2項)
  主語「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は」
  述語「損金の額に算入しない」

ということをポイントに挙げています。

余談

引地税理士
引地税理士

いかがでしたでしょうか?

とても分かりやすくて、かなり勉強になりました。

次回は、判例の基礎知識、について解説していきます!

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