皆さんこんにちは、鹿児島の税理士の引地です。
今回は、税法条文を読むための法令・判例の基礎知識について解説していきたいと思います。
前回は、法令の基礎知識について解説していきましたので、今回は、判例の基礎知識について解説していきます(前回の記事⇒https://zeikin-clear.com/zeimuzyoubunn-hourei-kisotisiki/)
今回参考にさせていただいた文献が「税法論文ってどう書くの? 著:脇田弥輝」という本です。
よく、税法を解釈するうえで、判例が用いられます。基礎知識がないと、ただただその判決を読んでしまうのですが、判例の構造はどうなっているのか、そもそも判例とはどの判決を指しているのか、といった基礎の部分から固めることが重要です。
今回参考にさせていただいた本は、すごく分かりやすくて実用的でしたので、内容をかいつまんでシェアしていきたいと思います。
裁判の流れ
日本では、正しい、間違いのない、裁判を実現するために三審制が取られています。
第一審で不服がある場合には、第二審へ控訴し、第二審で不服がある場合には、第三審へ上告をします。
第一審では、地方裁判所が事件を扱い、第二審では、高等裁判所が事件を扱い、第三審では、最高裁判所が事件を扱います。(家庭裁判所、簡易裁判所は税務訴訟は扱わないはずです)
「判例」と「裁判例」の違い
まず、押さえておきたいこととして、「判例」と「裁判例」は同義ではないことに注意しましょう。
まったくのイコールではありません。
「裁判例」とは過去の裁判例のすべて、を指しており、「判例」とはそのうちの、のちのちの裁判に影響を及ぼし、先例として重要な役割を持つと考えられているもの指します。
基本的には、狭義の意味で、「判例」とは「最高裁判所の判決」を指します。
なぜ、最高裁判所の判決を指すのかというと、控訴、上告があった場合には、上級審における最高裁判所の判決が優越されるからです。
「判決」と「裁決」の違い
「判決」と「裁決」。こちらも似たような言葉ではありますが、定義としてしっかり区別されています。
判決とは、裁判所が下した判断をいい、裁決とは、行政手続法上の訴訟における審判所の判断のことをいいます。
税務に関することでいうと、「裁決」を下すのは「国税不服審判所」であると言えますね。
裁決は行政手続きの上での最終判断になるため、税務署側は不服があっても訴えることはできません。代わりに納税者側は不服がある場合には、地方裁判所へ控訴することができます。
「却下」「棄却」「差戻し」の違い
「却下」「棄却」「差戻し」。こちらも訴訟においてよく聞くキーワードであります。
意味としては、「認めない」という意味では同じですが、こちらについても、ちゃんと定義の違いがあり、
却下 ⇒ 上級審が審理(事実関係や法律関係を詳しく調べて明らかにすること)すらせずに、訴えを退けること。判決が確定する
棄却 ⇒ 上級審がいったん訴状を受け取り、審理をしたうえで、その訴えを退けること。判決が確定する
差戻し ⇒ 下級審の判決を取り消したり、破棄したりして、下級審にもう一度裁判をさせること。判決は確定しない
判決文の構造
判決文の構造としては、概ね下記のようになっています。
(イ)主文
⇒裁判所の判断を示している。
(ロ)事実及び理由
事案の概要
争いのない事実
当事者の主張の要旨(争点)
裁判所の判断
事実認定
法令解釈
結論
下級審においては、事件の事実認定と法令の適用について審理が行われますが、最高裁判所においては、法律の解釈・適用が正しいかどうかを審理するため、原則として事実の心理はしないので、判決文に、事実の記載はありません。
余談
いかがでしたでしょうか?
判決を前提知識なしに読み込むのと、
ある程度把握して読み込むのとでは、効率・理解が違ってくるはずです。
参考にさせていただいた本は大変参考になりました。
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