私、中田敦彦のYouTube大学が好きで、中田敦彦のオンラインサロンにも入会しているのですが、M&Aについての授業をされていたりして、超高齢化社会の日本では、これからは企業経営の出口としてM&Aが活発になっていくことも考えられます。
私も経験がありますが、その会社の場合は、社長の株式が相続の際揉めるのではないかという次期社長の懸念点から、株式譲渡のM&Aをしました。
今回は、M&Aの概要、実際主流になっている方法の紹介、その主流になっている方法の使い分けまでご紹介します。基本的には、「サクサクわかる!M&Aの税務(著:佐藤信祐) 」を参考にして、私の解釈で本文を書いております。
M&Aとは
M&Aとは「mergers and acquisitions」の略であり、一般的には企業の結合および買収を意味します。M&Aの手法には様々な手法がありますが、大きく分けて、①株式を譲渡する手法と②事業を譲渡する手法の2つに分けられます。
サクサクわかる!M&Aの税務P3
荒くかみ砕いて説明すると、M&Aは株式を譲渡するか、事業を譲渡するかの方法しかないとも言えます。
- 株式を譲渡する手法としては、株式譲渡、株式交換、株式移転・・・など
- 事業を譲渡する手法としては、事業譲渡、会社分割、吸収合併・・・など
実務上は、被買収会社・被買収会社の株主からすると現金をもらった方がうれしいので株式を譲渡する手法としては、株式譲渡が一般的で、事業を譲渡する手法としては、事業譲渡と会社分割が一般的なようですので、とりあえずこの太字の用語を押さえておきましょう。
株式譲渡とは
株式譲渡とは、被買収会社株式を買収会社に譲渡し、対価として金銭を取得する方法をいいます。
サクサクわかる!M&Aの税務P4
会社における株主とは、事業方針の最終意思決定権を持つ者になるので、その会社の株式を100%保有している場合には、その会社の経営を支配していることになります。
ですので、その会社の株式を売り渡すことによって、買収した人・会社はその会社の経営を思い通りに動かせることになり、その対価として買収された人・会社は金銭を取得します。それが株式譲渡という方法です。
株式譲渡のメリット・デメリット
メリット・・・事業譲渡の場合は、資産・負債の名義とかをいちいち変えていかないといけないが、株式譲渡の場合は、株式の経営権のみ取得するような形になるので、楽な方法と言えます。
デメリット・・・決算書上に載っていない負債などがある場合、それも引き継いでしまうのでそのリスクはあります(潜在的なリスク)仮に後日見つかったとして被買収会社に損害賠償請求を掛けたとしても、損失額の満額が返ってくるかは分かりません。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、被買収会社の事業を買収会社に譲渡し、対価として金銭を取得する手法をいいます。
サクサクわかる!M&Aの税務P5
こちらは分かりやすい方式ですね。会社の事業の全部、一部分を売って買収・事業承継するという方法です。
事業譲渡のメリット・デメリット
メリット・・・株式譲渡と違って、決算書に載っていない負債(潜在的なリスク)などは引き継がないので、そこはメリットです。
デメリット・・・個々の資産・負債の契約を結びなおさないといけないので、事務が煩雑であることがデメリットです。
会社分割とは
前述しましたように、会社分割とは事業譲渡の一種ですが、定義としては
会社分割とは、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社(または新設会社)に承継させることをいいます。事業譲渡と異なり、分割法人の事業を分割承継法人に包括承継させることから、個々の資産および負債、契約関係の移転手続きが容易になるというメリットがあります。
サクサクわかる!M&Aの税務P67
とのことで、規模の大きいM&Aになると、事業譲渡方式だと手間がかかるので、会社分割が選ばれることがあるようです。しかし、債権者異議手続に1~2ヶ月かかるので(官報公告などをした後に異議を受け付ける期間)小さなM&Aの場合には事業譲渡方式が選ばれるようです。
ちなみに、事業譲渡方式と会社分割における法人税法上と取り扱いはほとんど変わらないようです。(おそらく個別承継するのか、包括して承継するかの違いでしかないから)
事例で使い分けして比較してみた
前述したように、事業譲渡方式と株式分割と税務上の処理がほぼ同じであるため、株式譲渡の場合と事業譲渡の場合とで、オーナー企業から買い取る場合で比較してみます。(サクサクわかる!M&Aの税務P114以降を参照)
前提として、個人の取得に対して課される税率が50%で課され、法人の所得に対して課される税率が30%であるものと仮定します。
会社オーナーから買い取る場合
事例として、
- 時価純資産(実際の企業の価値)3000万円の会社を、会社オーナーから9000万円で買い取ります。
- オーナーの株式の取得価額(取得のコスト⇒つまり出資した金額)は100万円だとします。
:被買収会社
株式譲渡方式 | 事業譲渡方式 | |
被買収会社 | 株主が変わるだけなので、処理なし | 9000万円-3000万円=6000万円の利益が現実になるため課税され、6000万円×30%=1800万円法人税が発生 |
被買収会社の株主 | 株式譲渡になるため、9000万円の収入かつ、そのコストが450万円(9000万円×5%=450万円>100万円∴450万円←ちょっと特例的な扱い)なので、(9000万円-450万円)×20.315%=1736万円 | いったん譲渡代金が法人の方に入りますので、オーナーが金銭を貰うためには、残余財産の分配(解散後に行う配当)をしないといけません。 ですので、全部譲渡した後に残るお金は9000万円-法人税1800万円=7200万円なので、その全部を配当するとなると、 【7200万円-100万円(資本金等の額←つまり出資を引いて利益を差引きで求める)】×50%=3550万円 |
合計 | 税負担1736万円 | 税負担5350万円 |
:買収会社
株式譲渡方式 | 事業譲渡方式 | |
買収会社 | 単に株式を買うだけなので、税務処理なし | 空白 |
事業譲渡法人 | 空白 | 資産調整勘定(いわゆるブランド料としての「のれん代」。時価より高い金額を買ったとして、買収企業はその差額分は企業のブランドに対してお金を払ったものと考える)が9000万円-3000万円=6000万円認識され、今後この金額が経費化されていきますので、▲6000万円×30%=▲1800万円が減税効果があります |
合計 | 税負担0円 | 税負担▲1800万円 |
合計:
株式譲渡方式 | 事業譲渡方式 | 有利不利判定 | |
被買収会社 | 1736万円 | 5350万円 | 株式譲渡方式が有利 |
買収会社 | 0万円 | ▲1800万円 | 事業譲渡方式が有利 |
合計 | 1736万円 | 3550万円 | 株式譲渡方式が有利 |
著者曰く、オーナー企業の大きなM&Aでは、配当所得に対する税負担が大きいとのことから、今回のケースですと株式譲渡の方が税負担が低くなる結果となりました。しかし、配当として分配しない場合には当然配当所得もかかってきませんので、結論が変わってくる可能性もあります。
子会社を買い取る場合
今度は例えば、上記例ですと個人から株式or事業を買いましたが、法人から買った場合はどうなるのかと言いますと、」
上の表の、「被買収会社側」のボックスの「事業譲渡方式」の「被買収会社の株主」の税負担が0円になるだけで他のところは変わりません。ですので上記の例にそのまま当てはめると、事業譲渡方式の方が有利になります。
なぜ、このようなことになるのかというと、法人に対して、完全支配グループの子会社から配当を受けた場合「受取配当等の益金不算入」の適用で、所得の金額をそのまま経費みたいな形で落とすので、税負担が生じないからです。これは、いったん法人税を課された利益を配当して、その配当に対しても法人税を課すというのは、法人税を二重で課しているので、二重課税状態になるのでその排除の目的でこのような制度があります。
M&Aの初歩の税務について、「サクサクわかる!M&Aの税務」を読みながら解説しました。
M&Aのやり方にもいくつかありましたが、その中でも会社に合う方法で、かつ税負担も予測してできたら最高ですよね。
本来は、登録免許税や不動産所得税なども考慮してスキームを組むようですので、専門家にご相談した方がよいと思います。
今回の記事が皆様の参考になればうれしいです!
:参考文献
「サクサクわかる!M&Aの税務」(著者:佐藤信祐)
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