みなさんこんにちは。鹿児島の税理士の引地です。
今回は、減価償却を計算するために耐用年数を決める必要があるのですが、耐用年数ってどうやって決めるの?って記事を書いていきたいと思います。参考文献は【(実例) 耐用年数総覧(著者 安間昭雄、坂元左 共著)】です。
会計ソフトで資産の種別を選ぶと、耐用年数を自動で設定してくれるところはあるのですが、そもそもこれはどういう法律に基づいて耐用年数を決定しているのかを知っておくことで、耐用年数表に合致しない資産を買ったとき、耐用年数を適切に選べるようになると思いますので、学習していきましょう。
※前提として、新品の資産の耐用年数を決定するという仮定で書いています。
耐用年数表に載ってない資産を買ったとき、
それっぽい耐用年数を選んでみたら、
え、こんな耐用年数長くないよね?みたいなことあるしな。
そうなんですよ。。
耐用年数の設定は、経費の問題もそうですが
償却資産税の残存評価額にも絡んできて、
ヘタな選択はできないんですよね。。
耐用年数ってどういう法律で決まってるの?
個人事業主・法人が資産を買ったとき、その資産は減価償却と言って、その購入した年に一気に経費として落とすのではなく、その資産が「使用効果を発揮するだろうと思われる年数」で、毎期経費を配分していきます。この「使用効果を発揮するだろうと思われる年数」のことを耐用年数と言います。
この耐用年数は、法令の中の一つである「財務省令」で定められています。法律は国会の承認が必要ですが、省令は国会の承認が必要ありません。制度の骨格は法律で定めて、その細かい計算規則とかはいちいち国会を通すと煩雑ですので、省令で定められていることになっています。
耐用年数でどうやって決まってるの?
先ほど、耐用年数とは「使用効果を発揮するだろうと思われる年数」であるとざっくり書きましたが、当時、耐用年数を制定した時の大蔵省主税局は耐用年数の算定の考え方として、4つの原則を公表していたそうです。
- 通常考えられる維持補修をするとした場合に、その資産の本来の用途用法により現に通常予定される効果をあげることができる年数とする。これを「効用持続年数」という
- 1の効用持続年数には、通常の技術発展による一般的な陳腐化を織り込むこととする
- 現況を基準とする技術及び素材の材質などを基礎として定める
- 原則として、その維持補修については通常の注意を払い、また、一般的に行われる修繕を行うことを前提とするほか、普通の場所に設置され、普通の作業条件により使用される場合を想定して定める。
こんな考え方で決めていたんですね
耐用年数を決める際の流れ
では実際にどうやって決めていくんだ?という話になるのですが、その際は耐用年数表(https://www.keisan.nta.go.jp/h29yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html←このURLの耐用年数は主なものが載っていて、詳細に詳しくは載ってはいません)を見ていくのですが、参考書籍を読んで調べていくと、資産ごとに耐用年数を設定する流れがあるようでした。その個別の資産ごとにどういう順序で耐用年数を決定していくのか見ていきましょう。
建物
建物とは、土地に定着していて屋根のある建築物を指します。
耐用年数決定の際は
- 主要骨格の構造を調べる(鉄筋、木造とか)
- 用途、使用状況により細目を選ぶ
という流れになります。ただし簡易建物(仮設の建物)については、上記の順序ではなく、簡易建物の耐用年数を用います。
建物付属設備
建物付属設備とは、建物にくっつけるような資産をいいます。
耐用年数決定の際は
- 構造、用途で分ける
- 分けた一部については、さらに規模、構造、材質により細目を選ぶ
という流れになります。特筆すべき点として、「店用簡易装備」の取扱いです。「店用簡易設備」とは小売店舗の内装代のようなもので、こういった賃借している店舗に施す内装代は建物付属設備で計上するようにしましょう。(償却資産税の論点でも、建物の場合は償却資産税はかかりませんが、賃借店舗に施す内装代は建物付属設備として償却資産税の対象になります。)
構築物
構築物とは、土地に定着していて屋根のない建造物です。
耐用年数決定の際は
- 用途別に区分する
- 構造又は用途が特掲されていない場合には、構造又は用途に区分する
- 品目に応じて細目に区分する
という流れになります。
車両及び運搬具
そのまま車両のことです。
耐用年数決定の際は
- 構造又は用途に区分する
- 各区分の細目で判断する
という流れになります。ちなみに、車に常に搭載するようなラジオ、クーラー、スペアタイヤみたいなものは、車両運搬具に一括計上して、車両運搬具の耐用年数で減価償却していきます。
また、車両運搬具は人や物を乗せる車を想定しているため、建設現場で使うパワーショベルやブルドーザーは機械装置として、機械装置の耐用年数を用います。
工具
そのままの意味で工具です。
耐用年数決定の際は
- 構造又は用途で区分する
- 細目がある場合には、さらにその細目で区分する
という流れになります。なお、これらの工具を一括して償却する場合には「前掲の区分によらないもの」として一括して耐用年数を定めることができます。
器具備品
パソコンなどの仕事で使う備品類です。
「備品」という言葉は、「備え付ける物品」と定義しているようですが、パソコンとかは持ち運びできますね。各固定資産の共通ルールですが、10万円以上の場合に固定資産として計上しないといけないので、10万円以上の備品類と思えばよいでしょう。
耐用年数決定の際は
構造又は用途で区分する
という流れになります。事業で使うちょっとした資産が器具備品に入ってくるため、対象となる範囲が広いので「前掲する資産のうち、当該資産について定められている前掲の耐用年数によるもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」という区分もあり、ややこしいのですが、「前掲する資産のうち、当該資産について定められている前掲の耐用年数によるもの以外のもの」は、工具器具費品については一括して細かい細目は見ずに「金属製のもの15年」「その他のもの8年」と区分するときに使います。(耐通1-1-6)このやり方で、耐用年数を設定するときは、以前も以後も細目で耐用年数を設定することはできません。簡便的なやり方もあってか若干眺めに耐用年数が設定されています。(パソコンの耐用年数は4年だしね)
機械装置
そのまんまの意味で機械です。
耐用年数決定の際は
- 設備の種類ごとに判定する
という流れになっています。機械装置について単品で判断しないのは、例えば自動車製造業だったら、クレーンだったり、工作機械だったり、溶接機だったり、これら機械を1台ごと区分して耐用年数を設定するのは煩雑であるため、一括して償却するために、業態ごとに耐用年数が設定されているところが特徴です。
余談
中古のものを買ったんだけど、
それも耐用年数表どおりに決定するの?
社長、するどくなりましたね。
中古のものも、上の耐用年数表を用いるのですが、
一定の算式を使って、新品よりは短くなります。
でしょ。
次回もお願いします
※中古品の耐用年数の決定については、後日記事にあげます。
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