M&Aの買収価格はどうやって計算するのか?

起業・経営

皆さんこんにちは、鹿児島の引地です。

先日顧問先様から、

社長
社長

会社買ってくれないか、って話来てるんだよね~
〇千万でって話が来てるんだけどどう思う?

引地税理士
引地税理士

いやー、ちょっと決算書見てみないとわかんないですね。

社長
社長

そっか~

社長
社長

先に交渉してる会社があって、

そこが決まらなかったらになるけど

もし話が来たら、決算書チェックしてもらっていい?

引地税理士
引地税理士

了解しました!

・・・そんなこんなで、結局話が来なかったみたいだったので、最初の会社に決まったのだと思いますので、社長様は残念そうな感じでしたが、

いったいM&Aの買収価格はいくらが相場なんだろう?って気になりません?

ってことで、今回は参考図書として「M&Aに強い税理士になるための教科書」(著者:山田勝也)を参考にしながら、買収価格にはいくらが相場なのか?解説していきたいと思います。

理論的なアプローチ

買収価格の決定には理論的なアプローチがあります。まずこちらから説明していきます。実は、日本公認会計士協会が公表している「企業価値評価ガイドライン」があり、そちらに理論的なアプローチが書いています。

で、そのアプローチ方法として「インカム・アプローチ」「マーケット・アプローチ」「ネット・アセットアプローチ」という手法があります。またこれらの折衷法が用いられることもあるようです。

「インカム・アプローチ」は、買収する企業が将来生み出す利益をもとに評価する方式となります。

「マーケット・アプローチ」は、市場で取引されている株価に着目して評価する方式となります。ですので上場企業向きの評価になります。

「ネット・アセットアプローチ」は、貸借対照表の純資産(企業の財産から借金などを除いた差額)に着目して評価する方法になります。

・・・ですが、実務的には理論的なアプローチを使うのではなく、次の段の実務的なアプローチをとることが多いです。

実務的なアプローチ

実務的なアプローチは、「年買法」「仲介会社方式」と呼ばれる評価方法で、M&A仲介会社で多く採用されている方法になります。

この方法は、「時価純資産(もしくは修正時価純資産)」に「営業権(のれん)」を加算することで、株主価値を評価するものです。そして、年売法の最も特徴的な点が「営業権(のれん)」を「正常利益×一定年数」という数式により算出する点です。

M&Aに強い税理士になるための教科書P33

年買法についての説明を引用してきましたが、もう少しくわしく解説していきます。

時価純資産とは

基本的には、決算書上に残っている資産・負債を時価評価した場合の純資産になります。例えば、現預金1000円、有価証券時価1000円簿価500円、借入金500円だった場合、

現預金1000円+有価証券時価1000円-借入金500円=時価純資産1500円

ということで、ストック的な価値として、この会社は1500円の価値があると言えます。これが純資産の考え方です。

で、買収価格を算定するうえでは、帳簿に計上されていない資産・負債(簿外資産、簿外負債)を考慮する必要があります。

時価評価、簿外資産・簿外負債の具体例がありましたので、引用しますと、

資産のうち、時価があるものは評価替する(例:外貨預金、有価証券、土地、保険積立金等)

債権のうち回収可能性が低いものを評価損計上する(例:売掛金、貸付金等)

簿外資産がある場合には計上する(保険金請求権、損害賠償請求権、全損計上されている保険等)

未経過勘定の計上(例:前払費用。未払費用等)

簿外負債の計上(例:未経過の訴訟債務、リース債務、未払労働債務等)

M&Aに強い税理士になるための教科書P33

・・・なるほど。財産性があるもの、今後支払う予定のものを洗い出している感じですね。

営業権(のれん)の計上

のれん、というのは、企業の超過収益力と言われています。さきほどの具体例を用いれば、時価純資産1500円の会社に2000円を支払った場合、その差額の500円がのれんとして計上されます。

1500円というのは、あくまでストック的な価値で、それだけで会社の価値って決まらないですよね。その会社の信用力だったり、ネットワークだったりがあるからこそ企業の売上が上がるわけなので、

具体例の場合500円超過で払った分が企業の超過収益力とみられ、この金額以上になにか価値(将来的な利益だったり)をもたらすかもしれないという期待があるからこそ、企業は超過で支払うわけです。それをのれんと言います。

で、M&Aの買収価格の算定の上では、そういったのれんの計算は、イメージするだけでもややこしいので、おそらく簡便化する意味でも買収価格の算定上は、「正常利益×一定年数」となっているのでしょう。

この部分を解説しているページを引用しますと、

前述の通り、年買法では営業権の算定を「正常利益×年数」という計算で行います。正常利益については、定義があるわけではありませんが、過去の決算数値等を基に対象会社が、今後獲得できるであろうと思われる正常な利益を指します。すなわち、過去の決算において発生していた臨時・異常な要因(臨時的な損失のほか、特需のような臨時的な収入も含みます)や、M&A後は発生しないような費用(例えば、過大な役員報酬やオーナー個人に紐づく経費等)を除外した利益を試算します。

また、年数については、評価者の経験や業種等によって異なってくるようですが、実務的に3年から5年程度の期間とされることが多いようです。

M&Aに強い税理士になるための教科書P34

・・・なるほど、役員報酬を支払わなくてよくなるわけですから除外するんですね。代わりに退職金を支払うという場合も考えられますから、その金額は簿外負債として認識する必要がありそうです。

正常利益の3年~5年ということは、簡単に言うと決算書上の利益の3年~5年を、その企業の収益力として評価することになります。

ストック的な評価は100円のものを買って、100円で売ることが出来るのですから、客観的な価値が分かりますが、のれんの金額を評価するにあたっては、将来的にこの金額以上にわが社に利益をもたらしてくれるか?という視点が必要ですね。

余談

引地税理士
引地税理士

いかがでしたでしょうか。

思っていたよりは、シンプルな評価でしたね。

もし買収価格を算定する際は、上記の点を留意してくださいね!

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