手遅れにならないための家族信託による認知症対策

相続税

皆さんこんにちは、鹿児島の税理士の引地です。

今回、「繫栄する大地主、衰退する大地主」(著者:鹿谷哲也)という本を読みまして、その中でタイトルで書いてある通り「手遅れにならないための家族信託による認知症対策」という章がすごく分かりやすかったので紹介したいと思います。

以前から家族信託の有効性を耳にはしていたのですが、しっくり理解できなかったので、今回この本を読んで整理できましたのでよかったです。

家族信託とは?

家族信託とは、要するに家族の誰かに自分の所有している財産を信じて託すことです。

繫栄する大地主、衰退する大地主 P75

「信じて託す」なので「信託」ということです。

信託法に基づく仕組みで特別法に該当しますので、民法の規定と重複がある場合には、信託法が優先されることになります。

具体的にどういったことを信じて託すのかというと、親が持っている賃貸不動産の管理を子に委託するとか、親が持っている土地の有効活用の一切を子に委託するなどを託すことが出来るようになります。

家族に委託するという点がミソです。家族と言っても身内で設立した株式会社や一般社団法人などの法人でもOKです。

そして家族信託の場合には受託者が行った行為が委託者である本人の行為として法律上認められるのです。

繫栄する大地主、衰退する大地主 P75

あくまで、運用などを託されているだけなので法律行為は委託者に帰属する形になります。

認知症になったら何もできなくなる!

ところで、この章のタイトルを「手遅れにならないための家族信託による認知症対策」とした理由は、もし本人が認知症になり正常な判断能力が失われたら、その瞬間から法律上も税務上も一切の対策を講ずることができなくなるからです。

繫栄する大地主、衰退する大地主 P75

認知症になった場合、民法上、制限行為能力者に該当するため、単独で契約等の法律行為を行うことができなくなります。

このため成年後見制度といって、成年後見人が本人の代わりに適切な財産管理や契約行為を行えるようにする制度がありますが、

こちらの制度では後見人は現状の財産を維持するための財産管理しか行うことができません。

具体的に言うと、賃貸不動産の管理を行うことはできますが、賃貸不動産を建てるとか、収益物件を購入するといった相続税対策を行うことができなくなります。

一方で成年後見人の場合には財産管理以外に身上監護もできますが、家族信託の場合には権限が財産管理に限定されていますので実務上は両方の制度を併用することが多いです。

繫栄する大地主、衰退する大地主 P76

制度の要点

本書では、家族信託の実務上の細かい解説もありましたので一部取り上げますと、

公正証書

信託契約書自体は公正証書にする必要はありませんができるだけ公正証書にすることをお勧めします。その理由は委託者の判断能力が問題になったとき、公正証書が有力な証拠となるからです。また公正証書であれば紛失した時に再発行してもらえます。

繫栄する大地主、衰退する大地主 P78

不動産の信託登記

不動産を信託する場合、登記名義人を委託者から受託者に変更します。この場合、物件毎に家族信託の内容を詳しく登記することになります。

繫栄する大地主、衰退する大地主 P78

余談

引地税理士
引地税理士

不動産や金融資産を信託する場合には、

登記や名義変更が必要になりますので

注意しましょう。

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