どうもこんにちは、鹿児島の税理士の引地です。
今回は、遺産分割協議の進め方の注意点について解説します。
遺言書がなくて、相続人全員の合意があれば、相続人間で決めた遺産分割協議に従って遺産を分割すれば何も問題はないですが、今回は遺産分割協議を進めるうえでイレギュラーな事案が生じた場合の進め方について解説していきたいと思います。
今回、参考にさせていただいたは「税理士が直面する法的トラブル相談事例集」(著者:弁護士 西尾政行)を参考にさせていただきました。根拠条文も分かりやすくまとめられていて大変勉強になりました。
遺産分割協議とは
まず、遺産分割協議の説明から入りたいと思いますが、とりあえ条文をそのまま貼り付けます。
民法907条
1.共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2.遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
上記が根拠条文となっております。第二項は横において、とりあえずは共同相続人の合意によって分割することができると書かれていますね。
事例別の遺産分割協議の進め方
それでは事例別の遺産分割協議の進め方について見ていきましょう。
遺産分割協議に参加している相続人が死亡した場合
例として、
被相続人Aの相続人である兄弟相続人B、C、Dが存在して、遺産分割協議の途中にDが死亡した場合。
相続人Dの相続人がいなかった場合、被相続人Aの遺産については、どのように遺産分割協議をするのでしょうか?
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回答としては、相続人B、Cで遺産分割協議を行う。のが正解になります。
本来であれば、DにDの子がいれば、代襲(相続人に代わって、相続の権利義務を承継すること)して、相続人になります。
代襲相続制度は、おそらく、被相続人の孫の生活を保障するのが趣旨だったかと思いますが、その孫がいないので、Dの相続人にあたるB、CがDのもともとの相続分を取得するため、結果的に相続人B、Dで遺産分割協議を行う、ということが取扱いのようです。
この場合、遺産分割協議書には、「Aの遺産については、B、C、Dの3名が相続したが、その後Dが死亡した。Dの相続人は、B、Cの2名である。よって、Aの遺産についてB、Cの2名で分割協議をする」胸を記載しておくと良いとのことです。
相続人の1人が行方不明である場合
例として、
被相続人Aの相続人である兄弟相続人B、C、Dが存在して、Dが行方不明となっており、B、Cとも音信不通になっている場合。
相続人Dが行方不明の場合、被相続人Aの遺産については、どのように遺産分割協議をするのでしょうか?
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回答としては、B、Cのいずれかが家庭裁判所にDの不在者財産管理人の申し立てをしたうえ、これにより選任された不在者財産管理人を交えて遺産分割協議を進める、という取り扱いになります。
まず前提として、遺産分割協議は相続人全員の合意により成立するので、相続人一人を除外して成立した遺産分割協議は無効となります。
この場合、相続人などが家庭裁判所に申し立て、Dの代わりに遺産を管理する人物である不在者財産管理人を立て、遺産分割協議を行うようです。この不在者財産管理人は、この相続の利害関係者とならない第三者が選ばれます。
相続人の1人が未成年者である場合
例として、
被相続人Aの相続人である妻Bと子Cが存在して、子Cがまだ7歳であり未成年者である。
未成年者は単独では法律行為(この場合、相続)をすることができないため、被相続人Aの遺産については、どのように遺産分割協議をするのでしょうか?
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回答としては、CのためにBは家庭裁判所に特別代理人を申し立て、Bと特別代理人によって遺産分割協議を行う、という取り扱いになります。
Cは未成年者であるため、原則、単独では法律行為を行うことができないため、代理人を立てる必要があります。
この代理人は、今回の相続の利害関係のない第三者が選ばれます。(相続人でない親族とか、司法書士とか)妻Bは利益相反関係になるため特別代理人になることはできません。
仮に、無権代理行為(代理権を有していない人が代理行為を行うこと。この場合妻Bは代理権を有していない)を行った場合、あとあとになって子Cが「この遺産分割協議は認めない」となったら、当初の遺産分割協議は無効になることに注意してくださいね。
遺言書はあるが、遺言書と異なる遺産分割協議をしたい場合
回答としては、遺言書があったとしても、相続人全員の合意により、相続人間で遺産分割の内容を決めることは可能です。
相続人Aに〇〇、相続人Bに〇〇とあっても、相続人A、Bは異なる分割をしたい場合、相続人A、Bの合意により、遺言を無視して遺産分割が行えます。
理屈として、国税庁のタックスアンサーがありましてそれが分かりやすかったので、一部転載します。
特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に、相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときは、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。・・・
なるほど、遺贈(遺言によって渡すこと)を放棄したと考えるんだな
では次に、遺贈者が親族以外の場合とかだったらどうなるのでしょうか?
この場合、その第三者も遺産分割協議に加わることができ、その第三者の利益も守られることになります。
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