家族信託が終了した場合の残余財産の評価について考えてみる

相続税

皆さんこんにちは、鹿児島の税理士の引地です。

今回は、家族信託が終了した場合の相続税の取り扱い、特に残余財産の財産評価について考えてみたいと思います。

といいますのも、家族信託があった場合の相続税案件に取り掛かっておりまして、自分の中で整理をつけたいという思いもあり記事にしてみました。

そもそも、家族信託(民事信託)とは何か?といったところから簡単にまとめていきたいと思います。

家族信託とは?

ちゃんとした定義のある言葉ではないと思いますが、家族を対象に信託をする、ということだと思っています。

信託っていうと、一般的には銀行の「投資信託」が思いつきますよね。

投資信託も信託の一緒で、投資家から資金を集めて投資して、そこで生じた収益を還元するっていうモデルです。

そもそも信託というのは、ある目的のために、財産をだれかに託して、運用・管理してもらうのが目的です。投資信託も同じようなスキームですよね。

で、信託の契約の中で出てくる登場人物としては、委託者、受託者、受益者の三役です。

委託者は、財産を委託する人、受託者はその財産を受託して管理運用する人、受益者はその管理運用によって生じた収益を受け取る人というイメージです。

例えば、母親、祖母、子供の三人がいたとして、母親がしばらく出張で子供と離れ離れになることが決まったとします。

そのとき、生活費として子供にいくらか渡しておきたい、と考えますが、子供が生活費を無駄に使いこむかもしれないリスクがあります。

このリスクを解消するために、母親がまとまったお金をいったん祖母に渡して、祖母は必要なお金だけ子供に渡す信託契約を結ぶことによって、子供の無駄な使い込みを防ぐことができます。

このようなスキームを信託契約で結ぶことができるのです。

実際の家族信託の利用例だと、認知症になって判断能力が失われる前に家族信託契約を締結して、資産の管理運用を受託者に任せて、委託者本人が受益者となる信託契約が多いような気がします。認知症によって判断能力が失われると資産の処分が難しくなってしまうので、その前に信託契約を結ぶ、という感じです。

同じような制度で成年後見制度などがありますが、こちらは基本的には医師の診断書が必要になったりするので、活用しやすい家族信託が使われている印象があります。

家族信託が終了した場合の残余財産の評価

で、本題の話に移りますが、

委託者が死亡した場合には、信託を終了するといった契約が一般的です。

その場合、当初信託した財産に係る信託受益権は、残余財産となって、当初信託契約時に決めた「どなたか」に移ります。

ちょっと分かりにくいので先ほどの例であげてみますと、

信託契約時に、母親が祖母にまとまった現金を渡して、祖母がその現金の中から、子供の面倒を見る、という契約を結んで、契約通り実行されていたとします。

で、仮に母親が亡くなって信託契約が終了した場合には、当初信託した財産である現金から生活費として渡していたお金を差引いた残り(これが残余財産です)については、子供に移転するというような契約を結ぶことができます。

今回の例でいうと残った現金ですが、例えば、認知症対策として不動産を受託者に信託していて信託が終了した場合には、その不動産が残余財産となって、当初設定した「どなたか」に渡されます。

このように信託が終了した場合には残余財産を受け取りますので、税法上、なんらかの課税が行われます。

委託者の死亡によって残余財産を受け取った場合には、形の上では、受託者から財産を受け取っていますが、実際には委託者が信託した財産を受け取っているので、委託者から遺言で貰ったものとして相続税がかかります。

ですのでこの残余財産を財産評価しないといけないことになりますが、どのように評価するのか文献等確認してみました。

まずは残余財産の定義ですが

残余財産とは、信託契約が終了又は解除された時点において、その信託財産に関する債権の取り立て及び債務の弁済を行い、その清算作業が終了した後に残った信託財産のことをいいます

わかりやすい家族信託の税金のはなし 著:山田吉隆 P54

信託財産もいろいろなので、「預金」と「不動産」に分けて残余財産の評価を考えてみましょう。

預金

預金を信託した場合には、受託者名義の信託口座が開設されますので、ここから順次払い出しが行われています。

残余財産は清算作業が終わった後の残りですので、つまり亡くなった時点での通帳残高から、債権債務を差引いた残額が相続税評価額ということで良いと思います。

ただ実務上は、相続開始後の未収金については、別途財産計上し、未払金については債務控除をすれば税額計算上は変わりがないので、単純に亡くなったときの残高を財産評価額とすればよいのではないでしょうか。

不動産

不動産については、債権債務を取り立てたあとの残額という想定がそもそも無いと思いますので、その不動産そのものの財産評価で良いのではないでしょうか?

余談

引地税理士
引地税理士

家族信託があったケースをこれまで経験していなかったので、

イチから勉強しました。

書籍にも詳しくは載っていなかったので、参考になれれば幸いです。

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